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vol.2 帽子を目深にかぶって
1時間の面談の間、彼女が視線を上げることはありませんでした。
「失礼します・・・」
ややおどおどした感じで事務所を訪れた彼女は、帽子を深くかぶったまま。 顔を上げなければ 表情も見せず、下をむいたままぽつりぽつりと話し始めました。
「急に姿を消した彼氏を見つけて下さい。」
聞くところによると、1年近くも付き合ってきた彼氏が 急にいなくなり、音信も不通になってしまったらしいのです。
彼が姿を消すきっかけになった 彼女からの質問は。
「もしかして 結婚してるの?」
そのことに気が付くまでどうして1年もかかってしまったのでしょう。 週に何度も彼女の部屋を訪れていた彼の決まり文句は
「お金がないけん 貸して。」
彼の事が本当に好きで何とかしてあげたい一心の彼女が、1年間に彼に貸した金額は300万を越えていました。
20歳そこそこの彼女が1年間に300万円をぽんと用意できるものなのでしょうか・・・? 私は 彼女の話を聞きながら色んな事を想像していました。
「割のいい仕事があるから。」
その彼から紹介されて、彼女は風俗の世界で必死に働きました。愛する彼のために。
突然消えてしまった彼に 彼女は
「お金はいいです。ただ 私の目を見てきちんと謝ってほしい。ただ それだけ・・・」
彼女の手帳には、彼が部屋に来た日に ハートのシールが貼ってありました。 それをしばらくながめながら彼女は言いました。
「最初からだまされてたんですよね?」
目深にかぶった帽子の奥で、彼女がどんな表情をしていたのか、最後まで見ることはできませんでした。
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